廃業した2代目クリーニング屋の奮闘記 ⑸

仕事に対するやりがいを感じられず、意欲も無く、人の意見も耳に入らず、ただ漫然と仕事をしていた時に嫁さんから
「もう、お金が無い!もう貯金も殆ど残ってない!」
って、言われたんです。

当時、工場の近くの賃貸マンションに住んでました。子供も二人できていて私立の幼稚園に行ってました。幼稚園代が一人3万位かかるそうです、二人で6万円です。家賃を払ったらもう殆どお金が残りません。
情けない話ですが、僕はそんな事ぜんぜん考えてなかったんです。嫁さんから話を聞いて初めて気づいたんです。それでよくやってきたな、と思いました。
随分後で分かったんですが、僕には言えなかったんで、実家から援助してもらってたらしいです。恥ずかしい情けない話ですよね。
早速、僕は父親に給料の交渉をしました。仕事も忙しくなってるんで、すんなり上げてくれると思っていました。でも、帰ってきた答えは
「そんな余裕は無い」「実家に帰ってきて同居しろ」
と、言う返事です。同居すれば家賃も食費も水道光熱費なども要らなくなるので、今の給料でもいけるやろう、と言う事です。
なるほど合理的やね(なんでやねん!!)
でも人には感情というものがあります。
工場(実家)のある地域は、お百姓さんが多く古いしきたりが残っている旧家が多い村です。長男は結婚したら親と同居するのがまだ当たり前に行なわれていました。しかし、時代の流れか一旦は同居しますがその後、別居したり離婚したと言う話を聞くようになりました。僕の村の同級生も、僕と同じように子供が二人いるのに離婚してしまいました。
僕が結婚するとき、同居はしないと言う約束で帰ってきました。
それは、友人や知人から同居は大変やで、という事を聞いていたからです。
仕事の事だけでも目一杯やのに、それ以外の問題も増えたら「もう絶対ムリ」と思ったので、それは受け入れませんでした。
そうなれば状況は変わりません。
もうクリーニング辞めようか?転職しようか?どうしようか?いろいろ考えました。
世間体もあるしなぁ~、根をあげてすぐ辞めて行ったと言われるのもいややしなぁ~、
考えているうち、「こんな忙しいのになんで、給料上げられへんねん?」「そんな儲かってないんか?」
「父親の経営の仕方が悪いんちゃうか?」「僕がやった方がうまくいくんちゃうんか?」
何の根拠もなかったんですがその時はそう思ったんです。
だから父親に言ったんです。「もう、僕にはりまやをまかせてくれ!」
当然そんなん了承するわけありません。
仕事に対する仕方や行動、考え方を見ていたらゆずる気持ちにはならないと思います。
僕は自分の事に気づいてなかったんですね。
誰が見てもそれは無理やと言うと思います。自分の事が分からない僕はすべて父親のせいにしていました。
自分がこういう状況に追い込まれているのは、すべて父親が悪いと思っていました。
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