廃業した2代目クリーニング屋の奮闘記 (42)

規模を縮小し直営1店舗(約1,500万弱)で、営業するようになりました。
店舗受付は時短でも良いので嫁一人でして欲しかったんですが、嫁に拒否され(もう昔みたいに長時間仕事はしたく無かったみたいです)午前中だけ入って貰えるパートさんに残ってもらい、午後から嫁が受付けするようになりました。

工場は年中通して、僕一人です。

店舗の営業時間は9じ~19時、工場は9時~17時です。
週一の定休日と月一の連休を取ります。
年末年始と夏休みを5日間づつ取ります。
店舗と工場、両方を3人でします。年間通して残業はしません。

僕の仕事は、毎朝8時45~50分位にボイラーのスイッチを入れ、9時から作業できるように段取りします。
9時から一点づつ洗い、毎時間15点をコンスタントに完成品して行きます。
毎時間同じ点数を仕上げられない作業方法で、時間毎の点数の増減が大きければ、ムダが発生しているので品質が下がりコスト増です。財布に穴が空いていることに気づいていません、口座から使っていない費用が引き落とされています。減るのが当たり前でそれだけかかる費用と思っています。
毎日の完成品にしないといけない点数は、お客さんの要望の引取り日を聞き、毎日が平均になるように調整すれば、約90点前後になるので14~15時頃には終わります。
昼食を取り、先に洗って置いたワイシャツを始めます。17時までには終わります(毎日約40枚位)。

店舗で預かった品の数と、工場で完成品にする数は連動しません。要するに店舗が忙しくても暇でも、工場は関係無く、いつも同じように仕事をしています。

昔、あまり取引の無い資材屋さんが春の繁忙期に、ウチの工場パートさんに「今、忙しくて大変でしょう?」と「今って忙しい時なんですか?」資材屋さん「???」、「うち、いつも同じなんで分からないです」資材屋さん「???」と言う、笑い話がありました。パートさんは真面目に答えたんですが、資材屋さんは理解出来なかった見たいです。

それから僕は店舗に品を届けて、受付をラストまでします。
19時に店舗を閉店し必要な品だけを工場に持ち帰り、明日仕上げるYシャツだけを水洗機に投入すれば19時半頃に業務終了です。
これを年中、同じように繰り返していました。

作業の「量」と「種類」を平準化することで、このようになります。
平準化は簡単に言えば繁忙期も閑散期も年中同じ様に仕事が出来る様にすることです。
口で言えば簡単ですが、年中同じにするためには毎月同じにしなければならないですし、毎週同じになるようにしなければなりません。毎週同じようにするには毎日同じように、毎日同じにするには毎時間同じにしなければなりません。
時間がズレれば後になるほどズレは大きくなります。それを無理矢理修正しようと思えば、ムリが発生し、ムリをするとムダが生まれます。要するに品質が下がりコストが上がります。
普通のクリーニング屋さんは、これをしている所が殆どだと思います。
量が増えればムリをしていませんか?していなければ良いですが。
精度を上げる為にはジャストインタイムと自働化も取り組まないといけませんが、嫁が昔のようにやる気があるなら1,500万位の売上なら、二人で残業無しで年間通して仕事が十分出来る様になります。月に1回は連休も取れますので温泉旅行もいけます。休みたい時に休める様になります。
まあ、頻繁には休めませんが・・・
従業員さんもいないので経費を払えば残りは自分達の収入になります。

入荷点数が多くなったので、急遽、次の日にズラすと言う急場しのぎのような仕事の仕方が、平準化では有りませんし、気を付けないとお客さんに迷惑をかけることになりますので、十分注意して下さい。信用を無くすことになります。

本来の目的は、自社の能力を把握し、その能力(サービスを含む)を最大限に発揮出来る環境を作り出し、自社の生産性と品質を安定的に発揮出出来るようにする事です。
クリーニングのトヨタ生産方式は洗浄技術や仕上げ技術、又はシミ抜き技術やサービスなどを十分に発揮出来る環境を作り出してくれる生産技術だと僕は思っています。

僕が色んな工場を伺った時に一番に見るのは、客単位セットです。
客単位セットがスムーズに短時間で出来ている所の工場はムダが少ない、コストが低いと判断します。そういう所は品質も良く安定しています。分配器があっても工場で客単位セットをしていない、出来ないは問題外です。トヨタ式の基準の人時生産性は一桁台と思っています。
工場で客単位セットが出来ていてもそのスペースが広ければ広いほど生産性は低いです。
そこから逆算してどこに問題があるか見ていきます。まあ、どこの工場もだいたい同じですが、現場によって、やっぱりそこの現場の問題点があります。
現場を見てそういう所の具体的指示が出来なくて、教科書通りの説明しかしない方は知識はありますが現場を知らない方です。机上の理論と言うやつですね、そんな上手くいくはずないやろと思ってしまいます。そういう方をたくさん見てきました。
でも、僕の作業の仕方も正しいとは思っていません。まだまだ知識が足りないと思っていますので、正しい知識をトヨタ式を参考にしながら自社の作業に落とし込んで頂ければ良いと思います。

話を聞けば、なんかめっちゃ大変そうですよね。
その通りで、これは、簡単に理解し身につくものでは無いと思っています。理解力の高い人なら別でしょうが、現場で実際に取り組まないと僕みたいに頭の弱い人は理解出来ません。
一度配置した機械を動かそうなんて思わないでしょうし、新しい機械を入れても空いてる場所に設置して終わりです。作業の順番や仕方・方法もずっと一緒で、資材備品も溢れたままで、変える習慣が無いです。そういう習慣を変える事は他にもやる事がいっぱいある中で変えるのは大変です。
そしてその成果が出るのに時間がかかるので、なかなか取り組もうと思わないのは当然です。
変えるときは、本当に大変です。

簡単にできることは得る物も少ないです。

でも、やると決断(断って決める事)すれば誰にでも出来るし、やった人は楽になるので元に戻りたくないと言ってくれます。
そして、仕事だけでは無く生活の色んな場面で役に立つ考え方だと思います。

いつも急場しのぎで、これからもずっとアタフタしながら仕事をするのか、
いつも安定的に経営出来る様に変えるのか、

経営者の方が考え決めて、行動に移していただければと思います。

クリーニングは、他の業種と比べれば特異な業種だと思います。その差は段々無くなってきていますが、その特異な性質を理解し真摯に取り組んできていれば、変化の激しい世の中の業態変化にも対応できていたと思いますが、残念ながら変化に弱い業種に成り下がってしまいました。

 

そんな感じで仕事をしていましたがだんだん設備がヤバクなっていきました。修理代が増えていき、いつ止まっても不思議で無い機械が増えていく状況になっていきました。雨漏りもひどくなり作業に影響を及ぼすようになってきました。
毎年夏休み前(8月)の嫁との打ち上げ飲み会で、来年も仕事を続けるか辞めるか話し合っていました。それは、辞めるなら12月で辞めようと思っていたので、そうなると秋の長期預りを預かることが出来ない(3月頃お返し)ので、夏の間に来年の計画を決めておかなければならないからです。
そして2017年の夏、予定より2年早くなりましたが今年度で廃業する事を決めました。

 

僕が廃業する事を知って、トヨタ式を一緒に始めた友人が心配して、
訪ねてきてくれました。

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